新刊:”The Moving Mansion” ….. 動く邸宅?

Fazil Say ファジル・サイ
Yürüyen Köşk(The Moving Mansion) ユリヤン・キョシュク(動く邸宅)

“Hommage à Atatürk” Concert rhapsody for piano
“アタテュルクへのオマージュに” ピアノのためのコンサートラプソディ

ピアノソロ Ver.
ピアノ5重奏 Ver.

ショット社から、ファジル・サイの新刊です

実は、曲への興味ではなく、タイトルになっているユリヤン・キョシュクにまつわるエピソードが興味深く、今まで全く興味を持つ機会がなかった異国の歴史に思いがけず触れることが出来たのでご紹介させて頂こうと思います(笑)

タイトルになっているユリヤン・キョシュク(発音のカナ表記が正確か不明)ですが、 マルマラ海という内海に面した、ざっくりした位置でイスタンブールの対岸の都市、ヤロヴァの海岸に建っています。キョシュクとはトルコでは庭園に建つ小さな邸宅のことで貴族が夏に避暑で滞在するためのものだったようです。その後その文化が形を変えてヨーロッパに伝わり、さらに形を変えて日本へ伝わり、駅の売店を指すキオスクの語源となりました。

次に”アタテュルクへのオマージュに”と副題にありますが、アタテュルクとはオスマン帝国時代の将軍で、のちに独立戦争と革命を指導し、トルコ共和国元帥から初代大統領まで上り詰めたトルコの英雄です。

この、建国の父として国民から称えられているアタテュルクが、勇猛果敢な戦士であっただけでなく、自然を愛する心優しい人だったという逸話のひとつとして残っているのが、「Moving Mansion 動く邸宅」「Walking Mansion 歩く邸宅」などと呼ばれることになった、このユリヤン・キョシュクに関するエピソードです。

ある日、ユリヤン・キョシュクを訪れたアタテュルクが、すぐそばに立つ巨大なプラタナスを切ろうとしている作業員に出会います。彼がすぐに庭師に電話して理由を尋ねると「枝が伸びて建物にあたり壁を傷つけているから」とのこと。この美しいプラタナスの木がそんな理由で切られるのは忍びないと、彼は「木を切らずにキョシュクを動かせ」と指示を出して周囲を仰天させました。
自治体や企業の協力のもと、邸宅の基礎を掘ってレールを敷くという方法で、ついにキョシュクが動かされました。その距離5メートル、無事プラタナスと距離を置くことが出来たのでした。1930年8月の美しく暖かい夏の夜のことだったそうです。
現在ユリヤン・キョシュクは「動く邸宅」「歩く邸宅」などと呼ばれ、観光地として、偉大な指導者を思い偲ぶ場所として、また日々の人々の憩いの場として親しまれています。

サイ氏が母国の偉人に思いをはせて作った1曲です。

トルコ文化ポータルサイトから写真をお借りしました
2006年に改築、周辺も整備されたそうで、写真は改装前のものです
https://www.kulturportali.gov.tr/turkiye/yalova/gezilecekyer/yuruyen-kosk