2つの「エリーゼのために」
ベートーヴェン バガテル イ短調
「エリーゼのために」1867年初版版&1822年草案版
Bärenreiter原典版
1808年から1810年の間に書かれたとされる世界で最も有名なピアノ曲のひとつですが、エリーゼとは誰なのか、自筆譜はどこへ行ったのか、未だこれらの謎に答えは出ていません。
エリーゼについては、この人ではないかと推測される女性が何人かいるようですが、決定的な資料が見つからず、はっきりしていません。
自筆譜については、1867年にベートーヴェン学者Ludwig Nohlが最初に出版した楽譜が、現在広く知られている「エリーゼのために」で、ベートーヴェンの完全な自筆譜から採譜されました。
この初版の際には確かに完全な自筆譜が存在していましたが、現在は行方が分からなくなっています。
現存している自筆譜は、ベートーヴェンが計画していたが実現しなかったバガテル・コレクションのために、1822年ごろに大幅に改訂した草案のみとなっており、現在われわれが知る曲とはかなり異なります。
この、ベーレンライター社の新刊、ベートーヴェン学者Mario Aschauerによる批判校訂版は、1867年初版版、1822年の草案版の2つの「エリーゼのために」が収録されており、非常に興味深いものとなっています。
ウィーンのピアニスト Michael Rosenberger による1822年の草案を基にしたヴァージョンの演奏をYoutubeで視聴できますので是非。
必ず、聴いた方の間で好き嫌いの論争が巻き起こるでしょう・・・。